イランの関与が疑われる印象操作の活動: 米国、英国、中南米、中東の視聴者を対象とした偽のニュースサイトとソーシャルメディアのネットワークを活用

ファイア・アイはこのたび、イランを発信源とし、米国、英国、中南米、および中東を対象とした印象操作を目的と考えられる活動を確認しました。この活動はイランの国益に沿ったコンテンツをより良く拡散することを目的に、偽のニュースサイトや複数のソーシャルメディアに関連付けされたアカウントを活用しています。コンテンツには反サウジアラビア、反イスラエル、パレスチナといったテーマが含まれているほか、米国・イランの核取引(JCPOA)など、イランに有利と考えられる米国の政策を支持するものが含まれています。ファイア・アイが明らかにした活動が持つ意味は深刻であり、ロシア以外にも何者かがオンライン・ソーシャルメディアを利用した印象操作・世論形成に引き続き従事していることを示しています。

この活動の正体はなにか?

図1は、これまでに特定したさまざまな偽のニュースサイトとソーシャルメディアアカウントの登録およびコンテンツプロモーションの関連を示しています。この活動の起源は少なくとも2017年にさかのぼります。ファイア・アイはこのブログ記事公開のタイミングにおいても、関連するその他のソーシャルメディアアカウントとウェブサイトを引き続き調査・確認しています。たとえば、ここで扱われていないこの広範な業務の一部であると思われる複数のアラビア語、中東向けサイトを特定しています。


図1:イランの関与が疑われる要素とその関連付け

私たちは、その起源と所属が明確ではないサイト、コンテンツをより良く流通させるために起源を隠していたり虚偽の個人もしくは法人を装っているサイトやソーシャルメディアアカウントを「偽物」とみなしています。これらのサイトに掲載されているコンテンツは、オリジナルのものも第三者によるものもあり、元の内容から改変されていることもあります。

この活動は、誰が何の目的で行っているのか?

FireEye Intelligenceの情報オペレーション分析チームによる調査に基づき、この活動はイランの何者かによるものであると判断しています。これは、サイト登録データやイランの電話番号へのソーシャルメディアアカウントのリンク、イランの政治的利益に合致したコンテンツの宣伝など、さまざまな指標の組み合わせに基づいています。指標の一例としては次のようなものがあります。

  • サイト「Liberty Front Press」と「Instituto Manquehue」のドメイン登録に使われたメールアドレスは、それぞれテヘランのウェブサイトデザイナーの広告とイラン系サイトgahvare.comに関連付いていることを確認
  • サイトに直接関係する複数のTwitterアカウント、および関連する他のTwitterアカウントが +98 というイランの国番号から始まる電話番号にリンクしていることを確認
  • 1979年にイランがパレスチナ人への支持と反イスラエルを表明するために設立した休日であるQuds Dayを重点的に宣伝するBernie Sanders上院議員を支持するアメリカの自由主義者を装う不正なソーシャルメディア上のペルソナを確認

こうした世論への影響操作は、本質的に正当なオンライン活動を可能なかぎり模倣して欺くことを意図しているため、起源がイランであるという点に置ける私たちの評価確度を中程度の信頼に限定しています。ファイア・アイが特定した証拠の内容を考えればほとんどその可能性は低いと考えられるものの、一連の活動が他の場所から行われていたり、異なる目的を意図していたり、あるいは本物のオンライン行動のほんの一部だけに注目した結果である可能性があります。この活動の背後にある特定の行為者、組織、または事業体について、ここまで述べてきた以上の詳細は分かっていません。イランとの関与が疑われるAPT35(Newscaster)は、スパイ活動の一部として不正なニュースサイトやソーシャルメディアアカウントを使用したことがある、と見られていますが、今回の活動についてはその関連を確認できていません。

概して、この活動の目的は反サウジアラビア、反イスラエル、親パレスチナのテーマを含むイランの政治的利益を促進するとともに、イランの核取引(JCPOA)と言った、米国におけるイランに有利な特定の政策の支援を促進することにあると思われます。また、米国に焦点を当てた活動の中では、著しい反トランプメッセージや、アメリカの自由主義に根ざしたペルソナによるソーシャルメディアアカウントとの一貫性が含まれています。ただし、この活動は米国内の2018年の米国中期選挙に影響を及ぼすように特別に設計されたものではないことには注意しなければなりません。

結論

私たちが明らかにしたのは、複数の何者かが、政治的世論を形成する手段としてオンライン、ソーシャルメディアを軸とした印象操作活動に引き続き従事し、さまざまな試みを行っていることです。これらの活動は、最近の情報操作研究の焦点に挙げられることの多いロシアによる活動をさらに拡張するものです。また私たちの調査は、このような印象操作によってもたらされる脅威がどのように進化し続けているか、特定の政治的または思想的な目標にかかわらず、同様の戦術が実行されるのかを示しています。

さらなる詳細

本活動に関する詳細なレポート(英語)は、本ページ右上のリンクよりダウンロードいただけます。

※このエントリは8月21日火曜日19:30 EDT 2018に掲載された以下の記事の日本語抄訳です。英語オリジナル版と内容に齟齬がある場合には、英語版の内容が優先します。

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